類聚メモ帳PART2

更新はすごい不定期です。

川崎大師に行ってきた(現代の信仰)

思い立って川崎大師に行ってきました。行こうと思ったきっかけは、特にないのですが、最近いろいろ一段落ついたので、どこかに出かけたいなぁと思っていました。しかし、車で行きたい場所は、いずれも雪や凍結の可能性がある地域なので、移動手段は電車に限ります。電車で行けるところとなると・・・そう言えば、川崎大師なんていうのがあったなぁ、でも行ったことないなぁ、ちょっと行ってみたいなぁと思っていました。思ってみると、あとは寝ても覚めても川崎大師。そこで、さっそく出かけました。 IMG_6621.JPG しかし、午前中に用事があったので、かなり出遅れてしまいましたが、品川駅から京急線で当地へ向かいます。この区間は意外と早くて、快速特急に乗れば、京急蒲田の次が京急川崎になります。京急川崎で、大師線に乗り換えます。京急川崎の駅で乗り換えるこの大師線。実は京急線のルーツたる路線なのです。 ♪梅に名を得し大森を すぐれば早も川崎の 大師河原は程近し 急げや電気の道すぐに
と、歌われているように、早くも明治32年(1899)に「大師電気鉄道」として開業しています。これは日本の電気鉄道の歴史の中では、かなり早い部類である上、関東では最初の電気鉄道でした。目的はもちろん川崎大師への参詣客輸送のためで、この大師線をもとに京急線は発展していきました。実は日本の私鉄の由来は、寺社参詣や行楽地への観光客輸送のためという場合が多いのですが、大師線の成功例を見た結果なのかもしれません。 そんなこんなでやってきました。京急大師線川崎大師駅。そこで見たものは・・・ IMG_6611.JPG おお!結構な人出。もう三が日も過ぎたのに、この盛況ぶり! IMG_6610.JPG 警察官やガードマンもいっぱい出て・・・お疲れ様です。 IMG_6612.JPG 表参道の仲見世は、露店も出て大盛況。 IMG_6613.JPG 参道はなおも続きます。 IMG_6615.JPG 結構、歩きました・・・ IMG_6616.JPG 大山門に着きました。でかい! IMG_6618.JPG 川崎大師というのは、通称で正式には平間寺(へいげんじ)と言います。神奈川県川崎市川崎区にありますが、東京方面からは多摩川を渡ってすぐの場所で、北東に羽田空港があります。真言宗智山派の本山で、弘法大師を本尊とするため、川崎大師の通称の方がずっと有名です。毎年、神奈川県内の初詣客は鶴岡八幡宮鎌倉市)とここ川崎大師が競っています。 ちなみに「○○大師」と名のつく寺院は、日本各地にありますが、ほとんどが弘法大師か、元三大師を祀っていることが多いのです。弘法大師真言宗、元三大師は天台宗の寺でそれぞれ祀られますが、各地に飛んだお大師様の、その正体はお坊さんなのです(弘法大師空海、元三大師=良源)。つまり徳の高いお坊さんに対する信仰なのですが、実際にそういったことを知って、お参りしている人はそれほど多くはないでしょう。それよりも川崎大師なら川崎大師、佐野厄除け大師なら佐野厄除け大師という個々のお寺への信仰になっています。 しかし、信仰というものは、そういうものでもいいわけです。そして、参詣客のほとんどは信仰という目的ともう一つ、物見遊山、つまり娯楽をメインとしているという事情があります。こういった庶民の参詣文化は、江戸時代に発達してより、今に至るまでほぼ代わっていないと言っていいでしょう。 いよいよ本堂へ。境内も大盛況。線香の煙がもうもうとしています。 IMG_6619.JPG 川崎大師は、江戸時代までの歴史はあまりよくわかっていません。ただし、近世以降、大師信仰と厄除信仰がミックスされ、特に明治以降に隆盛を極めました。先にも述べた通り、この参詣者の利便のため六郷橋と川崎大師の間に敷かれたのが、大師電気鉄道です。 護摩札を受け付ける場所も大盛況です。 IMG_6620.JPG 伽藍は比較的新しいものが多いのです。これは昭和20年(1945)の川崎大空襲による焼失のためです。しかし、立派な山門や本堂は、川崎大師への信仰が現在まで続いていることを裏付けるものです。 それは、厄除祈願のみならず、南関東の人ならば車に「川崎大師」のステッカーを貼っている人を多く見かけていると思いますが、自動車交通安全のような実に現代的な願いに対しても、川崎大師への信仰は強いのです。(南関東では他に「成田山」のステッカーも多いですが、成田山新勝寺真言宗智山派ですね) こんな時刻表示板まで。駅みたいですね。 IMG_6622.JPG いやぁ、なんていうか、こういう施設も本格的ですね。 IMG_6623.JPG 私は昔は、こういう大勢の人が出る寺社よりも、ひっそりとした古刹・古社の方が好きでした。しかし、昨今は、こういう信仰と俗が入り混じった空間が、たまらなく好きです。つまりこういった寺社は、仏教的な教義よりも、厄除や自動車交通安全といった庶民の生活の中での切実な願いに重点を当てているということが言えましょう。だから、本来、無宗教人とみられることが多い日本人であっても、川崎大師のような寺院を実に身近に感じるのは、当たり前なことですね。 この日の最終、護摩も多くの人が申し込んでいます。 IMG_6625.JPG 私は護摩祈願はしなかったものの、厄除札を買いました。 IMG_6640.JPG 梵字(上に3行で書いてある不思議な字)や宝印(赤い印)に代表されるちょっと不思議な、ミステリアスな香りを漂わせるもので、霊力を感じさせるのが真言宗密教)の特徴ですね。 川崎大師への参詣は、科学技術が発達した今においても、なお強烈に宗教を支える庶民のパワーを見た気がしました。 (おわり)