類聚メモ帳PART2

更新はすごい不定期です。

石山寺その1(大津市)

古来より霊験あらたかな観音霊場と言われれば、やはり大和の長谷寺、京の清水寺、そして近江の石山寺であろう。「紫式部が筆があと」とて、式部が源氏物語を書き起こしたという伝承、そして「石山寺縁起絵巻」などで有名なこのお寺だが、やはり貴賤問わず訪れた観音霊場であることがその基盤であることを忘れてはなるまい。今年、大河ドラマ「光る君へ」のブームにのって、ようやくその石山寺を訪れることができた。

石山寺までのアクセスはいろいろあるが、往路はバスを選択した。琵琶湖線(東海道線)の新快速も止まるJR石山駅から京阪バスで「石山寺山門前」バス停を目指す。京阪電車石山寺駅まで行ってもいいが、歩く距離はバスの方が多少短くて済む。

 

そんなわけで石山寺の参道。幟がいっぱい立っているが…

「2024年大河ドラマ『光る君へ』」『紫式部の筆はしる 源氏物語誕生の地・大津』

吉高由里子さん主演の大河ドラマ「光る君へ」

珍しい平安時代が舞台の大河ドラマ大河ドラマといえばやはり人気どころは戦国時代と幕末であるから、平安期、それも武士や戦(いくさ)ではなく、王朝貴族たちをテーマにした大河ドラマっていうのも珍しい。

(しかし、逆に考えると日本人って本当に武士が好きなんだなぁ…)

 

女性が主人公の大河ドラマはフィクションだらけになるので(史料がなさすぎて)、面白くないというジンクスを打ち破って、結構面白い(個人の感想です)。

そして、何より大津が大河ドラマにのっかって盛り上がるのがいい感じ。

▲JR石山駅のコンコースにも「源氏物語誕生の地 大津へようこそ」の文字が。

何しろ滋賀県、特に県都大津市は京都に隣接し(というか京都市と隣り合っており)、石山寺だけではなく、比叡山延暦寺園城寺三井寺)、瀬田の唐橋近江神宮と観光資源は盛りだくさんなのに、やはり京都に近すぎてそのイメージがあまりない。

県都の大津も京都と比べると、すごい大きな都市というわけではない。だけど、滋賀県も大津ももっと出しゃばっていいと思う。私は滋賀県はまだまだ訪れたいところがいっぱいある。

(ただ、『源氏物語』が石山寺で「須磨」の巻から書かれた、というのは後世の注釈書の一部にみられる伝承に過ぎないのだが…)

 

さて、石山寺の山門。人々が賑わいを見せる仁王門の前の雰囲気は、まさに長谷寺と同じ。

私は清水寺(京都)は中学生の時の修学旅行で行って以来なので、記憶にないが、少なくともこの雰囲気は大和の長谷寺と共通している。

みんな門前でカメラを構えて楽しそうに記念撮影をしている。私たちもそうした。

きっとのこの雰囲気は往古よりそうであったのに違いない。

観音の結縁を求めて、この寺に押し寄せてくる人々の思いも願いも、今もずっと変わらないのだ。

さて、例によって本堂は崖の上に張り出す懸造であった。これはやはり大和の長谷寺、そして何と言っても京都の清水寺と共通である。

どうして観音霊場の寺院は懸造なのか。それについては調べてみないとなるまい。

いずれわかるようにしておきたい。

あまり本堂の外観はいいスポットがなく、うまく写真に撮れないのだが、正堂と礼堂がつながっている複合的な建築となっている。崖にせり出す懸造の部分は参拝者が本尊を拝む礼堂の部分である。

なお、この懸造の本堂は国宝。平安時代の永長元年(1096)に再建されたものであるが、礼堂の部分は慶長年間に淀殿によって再建されたものである。

上がってきて毘沙門堂。中をみることができる。なんと祀られている毘沙門天は、古い形式の兜跋毘沙門天であった。写真以外では初めて見た……気がする。

そしてこちらは蓮如堂。

なお、気になって石山寺の宗旨を確認してみたら東寺真言宗とのことであった。なんとなく天台宗かと思ったら、東密!もっとも創建の由来を訪ねれば、最初は華厳宗であり、平安期に密教化していった。

……で、なんで浄土真宗蓮如を祀る堂になっているのかは、これも調べないとわからない(もとは山内にある三十八所権現社の拝殿であったようだ)。ちなみにこの建物も懸造である。

…というわけで本堂へ。

この写真なんかは正堂と礼堂が結合している様子がよくわかる写真だ。

しかし、こういった礼堂を設ける形態の建築物はやはり西日本の古寺じゃないとみられないね。

内陣の拝観はぜひした方がいい。本尊は秘仏でお前立ちしか見ることはできないが、内陣はグルリとみることができるし、しかもその他の古仏をきわめて近くで見ることができ、素晴らしい。

なお、本尊が如意輪観音なのは意外だった。何しろ大和の長谷寺は十一面観音、京都の清水寺は千手観音(十一面の)である。

如意輪観音というのは、私が気になっている聖徳太子信仰との関わりがある仏さまだ。これはいったいどういうことであろうか…

(つづく)