類聚メモ帳PART2

更新はすごい不定期です。

本興寺の津波供養碑(長生村)【前編】

出張で千葉県の外房の方に行ってきた。その帰り道、以前から気になっていたものがあるお寺によってみた。

それは千葉県長生郡長生村一松ひとつまつ集落所在の本興寺にある津波供養碑である。 これは元禄16年(1703)11月23日夜に発生した元禄地震による津波被害による死者を供養するためのものであるという。

かねてより千葉県内の水難供養碑に興味があったことから、遥々遠方まで出張に来たついでに寄ってみることにした。

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◆PART1 「驚」の交差点

当地へ向かう途中、面白い地名があった。この何の変哲もない交差点をご覧いただきたい。

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長生村 驚」

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そのまんま「おどろき」と読むようだ。後から調べたらこのあたりの地域名であった。 この珍しい地名の由来が知りたい、と思ったが、あいにく『歴史地名大系』がないので後日調べてみることにしよう。 交差点の名前には、市町村合併や住居表示の変更で消えてしまった歴史的な名称が残っている場合が多く、面白い。 なお、ここに来る途中、大網白里市に「下ケ傍示(さげぼうじ)」という信号があった。

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※画像はGoogleストリートビューより

 

傍示というのは牓示のことで、その昔、石とか杭とかで境界を示したものだ。 例えば中世には四至(しし)牓示という言葉があるが、これは荘園や公領の区域を示すため四方に置かれた牓示のことである。 車で田舎を走っていると、こうした地名に出会うのが楽しくてたまらない。

 

◆PART2 GFS号の置き場

当地へはカーナビの指示に従っていたらいとも簡単に着いてしまった。 何しろ田んぼのど真ん中にあるので、わかりやすかったのだ。

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しかし、車を置く場所が……ない。 境内には駐車場があったが、普通のお寺ゆえ、勝手に止めていいとは書いてない。 そこで路駐だ、と思い、墓地のそばの路肩に止めたが、田んぼの中の一本道で多少邪魔である。 当初こそ、そこに置いて撮影を始めようと思ったが、「別の車が来たら……」と気が気ではなく、結局、また車に戻って、どこか良い駐車場所を探すことになった。 で、結局、GFS号は山門横のスペースに止めることになった。ここなら車が来ても横を通り抜けられるほどの余地がある。

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なお、この山門は近年建て直されたもののようだ。 IMG_4598.JPG

 

というのも、2014年撮影のGoogleストリートビューには、一回り小さいサイズの山門が写っている。

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※画像はGoogleストリートビューより

そして、かつてはこの門の傍らに私が見に来た供養碑の一つがあったのだ。

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この日はとても暑い日であった。

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だが寺を取り囲む青い田んぼの美しさは目をみはるばかりのものであった。 IMG_4600.JPG

 

暑いのはかなわないが、この季節でしか見られない光景であったであろう。

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◆PART3 一松山本興寺

さて、ちょっと覗いてみた本興寺の本堂は仏堂らしくない形式をしていた。

お寺のホームページによると、この本堂は昭和8年(1933)の建築であるという。

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この本興寺の宗派は法華宗本門流である。 IMG_4604.JPG

法華宗本門流日蓮系の宗派で室町時代の僧・日隆を流祖とする。

本能寺の変でおなじみの京都・本能寺もこの流派の大本山となる。

 

なんでか日蓮の門下というのは、すごいいろいろな流派があって、戦前期には政府の命令で統合されたこともあったが、結局は分離・独立して今に至る。

しかし、私の出身地・鎌倉にはプレーンの日蓮宗のお寺ばっかりあったから、このようなプレーンの日蓮宗ではない、日蓮系寺院はちょっと新鮮だ。

日蓮安房・小湊の生まれで、房総三国の教化にも努めたので、千葉県は日蓮宗のお膝元的なイメージが私にはある。実際に内房も外房も日蓮宗やその系列の寺院は多いはずだ。

ちなみに私の直感的に、東日本だとプレーンの日蓮宗ではない、日蓮系の諸派は千葉県の他に静岡県に多いような気がする。

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この長生村一松所在の本興寺は、寺のHPの記載によると、もともと真言宗の寺であったという。

永正15年(1518)に日幡にちばん上人の折伏しゃくぶくによって法華宗に改宗したという。

折伏とは悪人や悪い教えを打ち砕いて、迷いから覚めさせることを意味する仏教用語で、特に日蓮系の宗派やその系統の新興宗教で使われることが多い。 隣接する蓮華院と久成院は当寺の子院で、かつては他に4坊あったという。

 

(続く)