類聚メモ帳PART2

更新はすごい不定期です。

最近見た映画

地元のTSUTAYAが9月末まで改装工事のため休業中。そのため、最近DVDを借りるには、渋谷TSUTAYAまで行かなければならない。それにつけても最近の渋谷TSUTAYAはレジの混雑が慢性化。ブースはいっぱいあるのに、人員が足りてない感じ。最近はGYAO!Amazonプライムビデオ、別にわざわざDVDを借りてこなくても、オンラインで映画やドラマが見放題といったサービスがあるから、これからレンタルビデオ業界も下火になってくるかもね… そんなこんなで仕事帰りに借りてきた映画DVDの感想。まずは気になっていた「グッバイ・レーニン!」(「GOOD BYE, LENIN!」、2003年、ドイツ) png001.png ストーリーの舞台はまだドイツが分断されていた頃の東ドイツドイツ民主共和国)。主人公アレックスの母クリスティーナは夫が家族を捨て、西ドイツに亡命したことがきっかけとなり、熱烈な社会主義者となる。しかし、80年代後半には東ドイツ社会は停滞し、その政治体制にも衰えが見え始めていた。そんな中、成長したアレックスは民主化を求めるデモに参加。その姿を見た母親はショックで心臓発作を起こし、8ヶ月も昏睡状態になってしまう。 その間に東欧には民主化の波が押し寄せ、東ドイツの指導者ホーネッカーは辞任、ベルリンの壁は崩壊し、東西ドイツは統一。旧東ドイツ自由主義と資本主義が押し寄せる。そんな中、母のクリスティーナは奇跡的に意識を取り戻す。しかし、医師から危険な状態は続き、次に心臓発作が起きたら最後だ、と言われたアレックスは、母が東ドイツが消滅したことを知ったら、きっとまた心臓発作を起こすに違いないと思い、必死に東ドイツ社会主義体制がまだ続いていることを装うとする…周囲の人たちはそんなアレックスに苛立ち、呆れながらも、一応、彼に付き合う。しかし、そんな虚構の日々も上手くは行かず…といった内容。
グッバイ、レーニン! [DVD]

グッバイ、レーニン! [DVD]

  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • メディア: DVD
意識がないうちに社会主義体制が崩壊してしまった、というのはうまいアイディアだと思う。同じ共産圏の民主化でもドイツのような分断国家でなければありえないシチュエーションだし、ドイツ国民にとっては考えさせられる内容であったのかもしれない。 また、この映画を見て思い出したのは、かつてポルトガルの独裁者であったサラザールのことである。彼は戦前からポルトガルに父権的独裁体制を築き上げ、第二次世界大戦を乗り越え、戦後も独裁者として長く君臨した。しかし、その政権末期の1968年、静養中にハンモックから落ちて頭部を強打し、意識を失い、2年後に目を覚ました。だが、彼が目を覚ました時、すでにポルトガルの父権的独裁体制は動揺し始め、植民地での独立戦争によってポルトガル社会は苦境に陥っていた。しかし、側近たちはサラザールにショックを与えないため、以前のままにあつらえた執務室で平穏を伝える偽の新聞を読ませ、サラザールは何ら効力を持たない命令書を書いて執務を続けた。結局、サラザールポルトガルの混乱を知らずに死去する。その話にかなり似ている。 ただ、アイディアが面白いだけで、あまり感じるところはない映画であった。 その要因としては停滞する社会主義、流れ込む資本主義。どちらもとても退廃的。全体的に常に重苦しく、また同時にどこかもの悲しい雰囲気が漂っている点がマイナスであろうか。一応、ジャンルはコメディなのであるが。 だけど、唯一の救いはアレックスの恋人のララ(ソ連から来た看護生)が綺麗だったこと。 png002.png 彼女に何かを感じた日本人男性は、私だけではないはず。 ただ、東ドイツの場合、低迷する社会主義東ドイツの指導者と国民は自分たちの手で平和的に放棄した。というか、そもそも東欧革命はルーマニアとかを除けば、ほとんどそうだった。 価値観の変更を強いられたのは、太平洋戦争に敗れた日本の方が重大な問題であったはずだ。敵国との戦争に軍事的に負けて、自分たちの価値観を捨てさせられて、敵国だった国の価値観を押し付けられたのだから、おそらく、社会主義に資本主義が流れ込むどころのショックではなかったはず。 さて、それに焦点をあてた映画は・・・あるのかな? ◇ ◆ ◇ ◆ そんなこんなで、続いては「終戦のエンペラー」(「Emperor」、2012年、アメリカ)。1945年8月、日本がポツダム宣言を受諾し、無条件降伏した後、占領政策を実行するマッカーサー元帥率いるGHQが、どのように昭和天皇の戦争責任を避けたか、ということを焦点にした作品。主人公は米国による占領統治実施にあたり日本の専門家としてマッカーサーに同行したボナー・フェラーズ准将。彼は実在の人物。だが、映画では「あや」という戦前から付き合っていた日本人の恋人がいる設定になっている。また、実在のフェラーズ准将の天皇責任論と映画での彼の立ち振る舞いは差異があるものとされている(現実のフェラーズ准将はソ連との対抗上、天皇の免責を主張した。米国は実際にその路線通りに戦後処理を進めていくのである)。
終戦のエンペラー [DVD]

終戦のエンペラー [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹
  • メディア: DVD
天皇の戦争責任というかなり際どい内容だからか、アメリカ制作の映画。そのため交渉がかなり危ういところがあるような気がしてならない。 撮影のほとんどがニュージーランドというから、それも仕方がないか。 冒頭のダグラスC-54で運ばれてきたマッカーサーの厚木到着も、厚木はあんなに山に囲まれた飛行場じゃないと思う。背景に写るあんなに立派で巨大な格納庫も、現代の飛行場のもので当時はなかっただろう。 png003.png それからアメリカ映画だから、登場人物(政治家、官僚、軍人)がみんな英語を当たり前のようにペラペラしゃべるが…近衛文麿木戸幸一とかはそんなに英語流暢だったのだろうか?本来、一番役作りがしやすい東条英機もぜんぜん似てないし。 png004.png ドラマ「あの戦争は何だったのか」や映画「日本のいちばん長い日」等の作品で、昭和天皇は戦争を嫌い、平和を願った君主として描かれる。しかし、本当に彼に戦争責任がなかったのか、と言うとそれは非常に難しい。 なぜなら、昭和天皇の戦争責任が回避された理由としては、米国を中心とする連合国主導の東京裁判では、対英米戦に限定された判断がなされ、ソ連の存在を背景に、米国が巧みに天皇の戦争責任を回避する方向に動いていたからだ。このことは吉田裕氏の『昭和天皇終戦史』に詳しい。 この映画のラストのように「天皇は本当に平和を願っていたんだよぉ、めでたしめでたし」とはいかないような複雑な国際情勢が現実には存在していたのだ。 そもそもこの映画の米国はずいぶんと寛容だし、日本の戦争責任の所在はかなり曖昧。いや、むしろ戦争自体が美化されているといってもいいだろう。 天皇の戦争責任はタブーな上、やはり今現在でさえ、米国のパワーバランスの上に日本の安全保障が存在している以上、なかなか終戦処理の現実を多くの国民が理解するのは今後も難しいと思われる。 そのためには、政治がどうこうというより、この国の子どもたちにしっかり歴史を教えること、教育を受けさせる、ということが大事なのだが、教育においてこれだけ文系科目が軽視されるこの状況ではそれもまた難しい。多くの日本人は生涯、盲目的に右派の自民党と日米同盟の「正義」を信じて疑わないのであろうか?上述の「グッバイ・レーニン!」の東ドイツの国民より、ある意味悲しい。 そういったことを考えさせられる作品だった。 映画自体は面白くないけどね。 ◆おまけ フェラーズ准将の恋人「あや」役のこの人、どっかで見たことある人だなぁ、と思っていたら、やっぱり「負けて勝つ」に出てきた女の人だった。 png005.png 同じような役柄が多いのね。 空襲の焼け跡に供えられた花やろうそく?怖い! png007.png フェラーズの恋人あやたちの位牌に供えられた枕飯(御飯に箸が立っている)。 png006.png アメリカ製作の映画ながら、妙に生々しい日本の習俗が随所に出てくるところがちょっと意外だった。 (おわり)