類聚メモ帳PART2

更新はすごい不定期です。

善知鳥峠(塩尻市)

これは去年の夏のお話。恒例の長野旅に出かけた時のこと。塩尻から辰野へ抜ける国道153号線の途中に善知鳥峠(うとうとうげ)という峠がある。善知鳥というのは難読だが、海鳥の名前である。塩尻方面から南下すると、峠の麓は小野の集落となる。この峠は、かつては南信から塩尻・松本へと抜ける重要な峠であった。また、中央分水嶺の一つで、ここを境に北へ降った雨は信濃川千曲川)を経て日本海へ、南へ降った雨は天竜川を経て太平洋へ注ぎ込む。

IMG_9405.JPG

そんなわけで峠には分水嶺公園という名前の公園が設けられている。

IMG_9425.JPG

IMG_9412.JPG

こちらの水のモニュメントは、ここが分水嶺であることを表しているのだろう。

IMG_9407.JPG

ここから流れた水は・・・

IMG_9408.JPG

左は太平洋へ、右は日本海へそそぐ。

IMG_9409.JPG

水が流れていないので、いまいちわからん。

IMG_9410.JPG

かつて塩尻と岡谷を短絡する塩嶺(えんれい)トンネルがなかった頃は、中央本線は辰野回りと言って、大きく南へ迂回していた。塩嶺トンネルの開通後、辰野回りは中央線のメインルートから外れ、支線と化してしまった。ちなみに辰野回りの中央本線は現在、善知鳥峠をトンネルで通過する。

maputoupass.png

道路も同じで、長野自動車道が開通していなかった頃は、名古屋方面から塩尻、松本方面へ向かうには、中央道の伊北ICで降りて、善知鳥峠を経由する車が多かった。

IMG_9420.JPG

現在では長野自動車道が同じく塩嶺トンネルで塩尻峠を通過するため、善知鳥峠の交通量は非常に少ない。

IMG_9416.JPG

かつてはここにドライブインがあったようだが、すでに廃屋となっていた。

IMG_9405.JPG

善知鳥峠の名は、この辺りに伝わる民話による。

IMG_9406.JPG

昔、ある貧しい猟師が善知鳥の雛を捕まえて、幼い息子を連れて、都に売りに行こうとした。善知鳥の親鳥は、我が子を取り返そうと、「ウトウ、ウトウ」と泣きながら、ずっと猟師の後を追ってくる。ちょうどこの峠に差し掛かったころ、猟師の親子は吹雪に難渋する。善知鳥の親鳥はそれにも関わらず追ってくる。

やがて猛吹雪で猟師たちは立ち往生してしまう。翌日、付近に住んでいる村人たちが峠にやってくると、雪の中で凍え死んだ猟師の亡骸があった。しかし、その猟師が覆いかぶさって守ったその息子は、何とか助け出された。その脇には同じように雪の中でこと切れた善知鳥の親鳥の姿があった。

親鳥もしっかりと雛を守りながら死んでいた。村人がその亡骸を拾い上げると、ひな鳥はそのまま羽ばたいていった。

信濃に伝わる悲話で、トラウマになった人も多いであろう、あの「雉も鳴かずば撃たれまい」と同じで、鳥がからむ信濃の民話はどこか切なく、物悲しいものが多い。

やはり信州の厳しい気候が織り成すものなのだろうか。

現在の閑散とした峠道の様子と、不思議な名前、そして悲しい民話。

ここを越えると、まもなく辰野。

そんな善知鳥峠はこの日もとても静かでした。

IMG_9419.JPG

何にもないけど、行ってみたかった善知鳥峠への到達に大満足。

さて、これからこの峠を南下し、辰野町小野の集落へ向かいます。

(つづく)