類聚メモ帳PART2

更新はすごい不定期です。

愛知県に行ってきた6(豊川稲荷)

設楽原の見学を終えたのはカメラの記録から、午後3時半。その後、私たちはここから約20kmほど離れた豊川市豊川稲荷へ向けて出発しました。計算では40分程度で着く予定だったのですが、国道151号線が意外と混んでいた影響で、1時間以上かかってしまいました。ちなみにここまで昼ご飯なし。昼ご飯を食べなかったのは、食べる場所があまりなかったのと、私はどうしても豊川でお稲荷さんを食べたかった、というのがありました。

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そんなこんなで4時40分頃、市営豊川駅東駐車場に車を止めて、豊川稲荷に歩いて向かったわけですが・・・

(※ちなみに豊川稲荷にも駐車場があります。私たちはちょっと豊川の商店街を散策するつもりだったので、ここに止めたのです)

ここはここはJR豊川駅前。なんか言っちゃ悪いけど、活気がない・・・

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駅前も商店街もたくさんのキツネさんたちが迎えてくれるわけですが、人間のほうはあまりいない。

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豊川って、自分の中ではかなり大きい町のイメージがあったので、ちょっと意外。

しかもお土産屋さんも、食事するところも、自分たちが歩いているそばからどんどん店じまいをはじめ、私たちはちょっと焦り始めました。

しまいには、私があらかじめリサーチしていたお稲荷さんときしめんが食べられるお店に行ったら、こちらももう店じまいだと言うことで・・・

他の店もあたってみたのですが、どこも店じまいで、この時点で昼食抜きが決定的。

まあ、もう夕方なんで昼食って時間でもないんですが・・・

お土産屋さんがどんどんしまっていくので、先にお土産でも見ようかと思ったのですが、なんとなくお参りする前にお土産を選ぶのもねぇ・・・と妙なプライドが邪魔をし、ドキドキしながら豊川稲荷の門前まで来ました。

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◆ ◆ ◆ ◆

まあ、ともかく気を取り直して、この不思議な豊川稲荷の参拝スタート。山門は修理中でした。

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鳥居があります。ここまではまあいいんですね。豊川「稲荷」だし。

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キツネ発見。

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ちなみにここに来る途中、晴れてるのに雨が降ってきました。

キツネの嫁入り?」なんて話していましたが、実は新城にいる頃から雨は降ったりやんだりしてたんですな。

ところで数ある神社の中でも、日本人にとってもっともなじみ深い神社と言われたらなんでしょうか。

私は「お稲荷さん」だと思います。

神社にそれほど詳しくない人であっても、「お稲荷さん」と聞けば、赤い鳥居に、「正一位稲荷大明神」と書かれたたくさんの幟、そして石や陶器のキツネが置かれた稲荷神社の様子をイメージすることは容易だと思います。

では、「お稲荷さん」は、どうしてこんなに日本人にとって普遍的な神なのでしょうか?

一般に「お稲荷さん」に祀られる神は、宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)です。

総本社は京都の伏見稲荷大社です。

これは稲を中心とした五穀をつかさどる神なのです。

つまり、農耕神というわけであって、農業国の日本でその信仰が形成されるのは自然ということなのです。

しかし、江戸時代には大都市の江戸で非常に多く勧請されたことに見られるように、稲荷神の性格は単なる農業神に留まりません。

実は稲荷神には商業振興、商売繁盛、家内安全としてのご利益が追加されていったようなのです。

確かに思い起こしてみれば、会社のビルの屋上に「お稲荷さん」の社があったり、大きなお屋敷の中に屋敷神としてお稲荷さんの祠(ほこら)があることは、珍しくありません。

私は子どもの頃、横浜の高島屋デパートの屋上にお稲荷さんの祠があったのを見て、たいそうびっくりしたことがありましたが(近代的なデパートとお稲荷さんの組み合わせが子どもながら不思議だった)、それもそういうことなのでしょう。

本堂(本殿ではありません)の前まで来ると・・・

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ここにもキツネがいました。

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ちなみに稲荷神のお使いをキツネとする民間信仰は中世からはじまったようで、今ではキツネ=稲荷神といった誤解もあります。

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さらにキツネの大好物がなぜか油揚げとなり、そこから油揚げを使ったお寿司を「いなりずし」または「おいなりさん」と呼ぶこともみなさん知っての通りだと思います。

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◆ ◆ ◆ ◆

こんな稲荷信仰ですが、例外なく中世以降、仏教との習合が進むと、ちょっとイレギュラーな信仰が起こり、それが現在に至るまで、根強い信仰圏を形成しています。

仏教では稲荷神をダーキニ(日本では一般にダキニ天と呼ばれる)というインド由来の神様と同一視しました。

そのダーキニは、人間の肝や心臓を食べる恐ろしい夜叉神であり、うかつに近づくと取り殺されて食べられてしまう一方、きちんと礼を尽して、秘法による祈願を行えば、絶大なる福徳を授けてくれる神さま、とのことです。

ハイリスク、ハイリターンというか、ただ聖天(歓喜天)と同様、日本人はこういう強烈な神さまに魅かれる面があるようです。

その一つが豊川稲荷に対する信仰です。

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ちなみにこれは豊川稲荷でもらったお札たちですが・・・

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例によって御影札にダキニが描かれています(左側)。

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これです。【クリックで拡大可能】

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なぜか日本ではキツネにのった女神のかたちで描かれます。

これをみると夜叉というよりは、弁財天みたいな感じになっちゃっていますが、後ろ足を大きく蹴り上げたキツネに乗っているところが、なんとなく飯縄や三尺坊や道了尊みたいです。

いろんな宗教がいい感じに混じってます。

ところでみなさんは豊川稲荷が神社ではなく、お寺であるということを知っている人は少ないのでは?

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私も、この事実を知ったのはほんの数年前のことでした。

豊川稲荷は、実は妙厳寺(みょうごんじ)という曹洞宗のお寺です。

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そのお寺に祀られる稲荷=ダキニ天が有名になり、いつの間にかそちらが主流になって一般に豊川稲荷と呼ばれるようになったのです。

しかし、実は妙厳寺豊川稲荷となるのは、意外にも遅く江戸時代の後期とのことです。

◆ ◆ ◆ ◆

さてさて、奥の院なるというところへ進んでいきます。

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お稲荷さんらしいたくさんの幟の中を抜けていくと・・・

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いくつか伽藍があります。

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こうやってみるとやっぱりお寺です。

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これは三重塔。

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さてさて着きました。

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この奥の院、何やら大変なことになっています。

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ものすごい量のおキツネさま。

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狐塚というそうですが、どうしてこうなったんでしょうね。

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ここはまた異様な雰囲気が漂っていました・・・

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さてさて戻ってくると、こちらにあるのは鎮守堂。

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なんと祭神は白山の神ということで、やっぱり神仏習合といおうか、いろいろ混じってます。【クリックで拡大】

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◆ ◆ ◆ ◆

こうして念願の豊川稲荷の参拝を終えました。

帰る途中、商店街の中にこんなお堂があったりして、豊川もまたいい感じでした。

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また来たいなぁ・・・でも来るかなぁ・・・遠いんですよね。

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帰りの浜名湖サービスエリアから見た浜名湖

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私はなぜか浜名湖が好きなんですよ。

そんでもって帰宅。お土産のコンちゃん。

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一軒だけあいてたお土産屋さん。

おばちゃんは妙に豊川の変なゆるキャラを進めてきたのですが、私はこっちの方が可愛くてこのぬいぐるみを買いました。小さいストラップタイプのものから、4000円もする巨大なものまでいろんなサイズがあります。ちなみにこれは1500円なり。

そんなわけで愛知県ツアー終わり。最初の記事で「甘い計画」と言ったのは、実はこの後、東京に戻ったのは日付を越える頃となってしまったことを指しています。

道路はずっと順調だったのですが、途中で牧之原の温泉に寄ったりしたので時間を食い、日付が変わる直前に友達の家の近くについて解散となりました。やはり愛知県は遠かった・・・

でも、非常にいろいろ見れて大満足でした。

また行きたいなぁ、愛知県。

今度は尾張の方まで行ってみたいものです。

(おしまい)

〔参考文献〕

国史大辞典』

佐藤知範『図解 仏像のみかた』(西東社、1994年)

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