類聚メモ帳PART2

更新はすごい不定期です。

静岡に行ってきた4(秋葉三尺坊大権現総本殿)

ここ可睡斎には、秋葉三尺坊大権現(あきはさんじゃくぼうだいごんげん)という天狗が祀られています。三尺坊という天狗への信仰は、秋葉信仰と呼ばれています。 秋葉信仰とは何か? その導入としては、まず関東人なら誰でも知っている東京の電気街(そして今はオタクの聖地)・秋葉原の地名の由来を説明する必要があります。 IMG_7003.JPG 現在の秋葉原の付近は、もともと町人が住む土地でしたが、明治2年(1869)に大火に遭ってしまいます。 そこで、時の政府はここに延焼防止のための空き地(火除地、ひよけち)を設け、そこに鎮火神社なる神社を設置しました。 ところが、町の人々はこの神社を、昔より火伏せの神として崇敬を受けていた秋葉大権現を祀っていると勘違いし、ここを秋葉(あきば)の原とか、「あきばはら」とか「あきばがはら」とか言っていました。 そうしているうちに、鎮火神社を設置した方も、 お役人 「もういいや・・・みんな秋葉権現秋葉権現言うから、秋葉神社にしてしまえ!」 ってことで、秋葉神社にしました。その秋葉神社は、後に鉄道拡張に伴い入谷の方へ移転してしまいましたが、秋葉原という地名は残りました。 で、みんなが勘違いした秋葉権現とは何かという話になります。 もとは秋葉信仰は、現在の静岡県浜松市天竜区(旧春野町)にある秋葉山に対する信仰で、もとは大己貴命(おおなむちのみこと)を祀っていました。しかし、近世からその信仰の中心は秋葉山にある大登山秋葉寺(しゅうようじ)に守護神として祀られる三尺坊という天狗へと変わっていきました。 この三尺坊は、もともと普通の坊さんだったのですが、越後の栃尾というところでハイパー厳しい修行をしていたら、神通力を得てしまい、翼が生えて、手に剣索を持ち、火がボーボー吹き出し、白い狐に乗る姿になってしまいました。 こうして天狗になった三尺坊は、秋葉山に飛んで行って、秋葉山の守護神となったのでした。 三尺坊の姿は、高尾山の飯縄権現や相模(神奈川)の大雄山最乗寺の道了尊、同じ遠江の奥山半僧坊と共通の典型的なカラス天狗の権現です。 この三尺坊権現の主なご利益は、火伏(=火防)であり、たびたび火災に見舞われた江戸をはじめ全国各地で大変な信仰を集めたのでした(もう一つ有名な火伏の神は、京都の愛宕山。こちらも天狗信仰)。 しかし、三尺坊権現は神仏習合の結果のもの(正確に言うと神要素は一切なし。修験道と仏教がミックス)であったので、明治維新神仏習合が否定されると、秋葉山秋葉神社となり、秋葉寺は廃寺となりました。このため明治6年(1873)に秋葉寺御神体は、ここ可睡斎へ移され、以後ここが秋葉山本殿となりました。移された理由は、可睡斎秋葉寺の本寺だったことによります。 ※後年、人々の運動によって秋葉寺も再建されたのですが・・・ こうして本堂の脇に移された三尺坊。今やこちらの方が可睡斎のメインとなってしまったわけですが・・・ IMG_7000.JPG 階段を上っていくと天狗がお出迎え。 IMG_7005.JPG 三尺坊の手下の小天狗と言ったところでしょうか? IMG_7006.JPG こちらにも幟がたくさん立っていて、超いい雰囲気。うーん、いいなぁ・・・ IMG_7007.JPG この幟の竿が風に揺れて、ぎーこ・・・ぎーこ・・・と言う音を出します。 静かな境内に、この音だけが響きわたる中、私は友達に、天狗信仰がいかに魅力的か熱弁を振るうのでした。 これが三尺坊を祀る本殿。 IMG_7009.JPG 由来がこちらにも書いてあります。【クリックで拡大可能】 IMG_7010.JPG
秋葉総本殿 可睡斎
 当山は日本第一火防霊場にして明治六年廃仏毀釈に伴い「三尺坊大権現さま」のご本体が秋葉山秋葉寺から本寺可睡斎へご遷座された事から起こったものであります 以来「秋葉総本殿三尺坊大権現鎮座道場」として全国に奉祭する秋葉さまの総本山として名を知らるゝに至ったのです。 三尺坊大権現さまは、一三〇〇年前、信州戸隠村岸本家に生まれ新潟蔵王権現堂において修行成就され観音大士のご化身として信仰を頂いております。 大願に曰く 一心以って我を信ずれば諸々心願必ず成就す 火防・交通安全・厄除(・)当病平癒(・)進学成就等・諸願成就の御祈祷道場です。御祈祷お申込みは受付まで
「秋葉総本殿」の額。 IMG_7012.JPG 本家の秋葉寺も復興しましたが、可睡斎としては本物の三尺坊を明治にここに移して、今もここにあるんだから、「ここが総本殿じゃ」っていうわけですね。 中に入ってみると・・・ IMG_7013.JPG 三尺坊の姿を描いた凧や・・・ IMG_7014.JPG 天狗のお面がありました。 IMG_7019.JPG 三尺坊の姿を描いた掛け軸まで。欲しいなぁ・・・ちなみに左が1万円、右は5万円なり。 IMG_7018.JPG 三尺坊の姿は、羽が生えた天狗で、火炎を背負い、狐に乗っています。飯縄権現に共通する典型的なカラス天狗の姿ですね。 IMG_7021.JPG いやぁ・・・なんというか・・・ IMG_7020.JPG この可睡斎は最高でした。 IMG_7022.JPG 私は昨今、天狗信仰に興味を持っているのですが、いやぁ・・・本当に可睡斎はいいですね。雰囲気が最高です。 また来たいなぁ・・・ IMG_7028.JPG 最後に売店で、お札を入手。 うぉー、先日、目黒の成就院秋葉山のお札をゲットしたばかりですが、それから日を置かずして、総本殿のお札を入手! IMG_7154.JPG 同じくお姿系のお札ですね。宝印の中にある梵字は、三尺坊の正体の観音でしょうかね? IMG_7155.JPG 成就院のお札よりも、もっと天狗らしい天狗です。 IMG_7156.JPG 狐に乗っています。 IMG_7157.JPG ついでに「トイレの神様」である烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)のお札も入手。 IMG_7160.JPG こっちはあんまり興味なかったのですが、ノリで買いました。 ♪トイレにはー それは・・・それは・・・怖い 烏枢沙摩明王が いるーんやでー ここ可睡斎のトイレにも祀ってありました。 IMG_7035.JPG ちなみに可睡斎には「日本一のトイレ」なるものがあるのですが、私たちは見ませんでした。 拝観料ゾーンの中にあったので・・・ お時間とお金に余裕のある方は、見に行って、どんなトイレだったから教えてください(笑) ところで各地で蒐集したお札がたまってきたので、そのうち電子お札資料館を作りたくなってきました。 さてもさても、こうして大興奮の可睡斎を見学した私たちは、次なる目的地へ向かうのでした。 (つづく)